2002年の欧州王者となったレアル・マドリードのスターたちと写真に納まる私  ( 合成 ←  当たり前だ)
マドリードA

物乞いの少女に一発叩かれて、心にも重い打撃を受けた。そういう気持ちでスタジアムツアーに参加したのだ。

 ところでツアーに参加するまで私の中のレアル・マドリード観は非常に悪いものだった。それは威圧的なベルナベウ・スタジアムの外観によって一層強化された。
「マドリードは、開放的なバルセロナとは違って、何かも尊大だ。街も、人も、サッカーチームも」
というわけである。

 ところでレアル・マドリードは別名「白い巨人」と呼ばれる。しかしこれは日本だけのことだ。スペイン語の別名エル・ブランコ」、英訳すれば「The White」ということで、どこを見ても「巨人」なる単語は出てこない。「白」はユニフォームの色だから分かるが、「巨人」はなぜ?ちなみに「巨人」はスペイン語で「ヒガンテ」と言い、日本プロ野球のあのチームは「ロス・ヒガンテス」となる。この辺りの事情についてはスポーツライター金子達仁の推測がふるっている。

それを参考に私は、マドリードのホテルでベルボーイの老人と次のような対話を交わした(英語の分かるスタッフに通訳してもらった)。

「レアル・マドリードは日本じゃ”白い巨人”と呼ばれてるんだ」
「強いからかい?」
「それもある。でも一番の理由は、日本プロ野球の東京ジャイアンツと共通点が多いからさ。(あっ日本じゃサッカーより野球の方がポピュラーなんだ)

@首都のチーム
A優勝回数が一番多い(レアル・マドリードはスペイン、欧州とも最多王座を獲得)

でも、一番大きな共通点は

B 他チームのスター選手を金でかき集める、だよ

こう言ったら、ホテルマンの爺さんは呵呵大笑とばかりに興じてくれた。

そう、このチームを「白い巨人と呼ぶのは、日本の巨人との共通点に気付いた日本のスポーツライターが始めたことではないか、と金子氏は推測しているのだ。それにしても、こうも共通点が多いのは驚かされる。
 Bは欧州のビッグチームならどこでも当てはまるが、このチームが特に派手にやっていたことは間違いない。近年では、生え抜きのスペイン代表ラウールを中心に、ジダンロナウドフィーゴ、そしてベッカム)といった各国のスター選手を集めて「銀河系軍団」と呼ばれたのは記憶に新しい。
 さて「アンチ巨人」を自認する私は、そんなわけでこのチームに対しても「アンチ」であった。それがツアーを続けるうちに徐々に変化してきた・・。

 スタジアムは8万人収容という大きさもさることながら、やはり気品、というものが感じられた。そしてスタジアム内博物館に展示された栄光の歴史に触れていくうちに感化されたのだ。
 「政府がえこひいきした」という話もあるが、スタジアム名になっている元会長(故人)の適切な強化策が図に当ったと考える方が適切なようだ。この辺りの歴史は、スペイン現代史ともリンクして非常に興味深い。
 
そしてとどめは下の写真(↓)にあるように、レアルのスター選手たちと写真(合成)を撮れるサービスがあることである! 私が選んだのは、02年の欧州王者を勝ち取った時の記念写真である。自分がその一員になったような錯覚さえ覚える。わずか10ユーロ(約1200円)でこういう体験できるのは安いものだ。他にもラウールとグラウンドで一緒になるという写真も選べる。
 こんな訳で、スタジアムの女性職員にツアーの感想を聞かれて、

好きだよ。最高だよ。バルセロナにこんなサービスなかったからね

と答えたのだ。
 ああ、そこの君。私の転向を笑いたまえ。私はなんとも弱い人間だ。しかしいくらアメリカ嫌いでもニューヨークを見れば「う〜ん、こりゃ敵わん」と思うだろう。私はそういう人間だ。すごいものは素直に賞賛したいのだ。

 こういうことで私のレアル・マドリード観、ひいてはマドリードという街への印象も大いに好転したのだった(笑)。

レアル・マドリードの本拠地サンティアゴ・ベルナベウの全貌
レアル・マドリード栄光の歴史を伝えるトロフィーと写真の数々。スタジアム博物館にて。

白い巨人の誘惑 〜レアル・マドリード考〜

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