帰国後スペイン旅行の話をすると決まって「何食べたの?」と聞かれた。というわけで、今回はスペインの食がテーマである。残念ながら食事の写真は撮ってないのでご寛恕いただきたい。
その前に「
スペイン料理」とは何か?という話から始めたい。
こう言うとすぐ「
パエリア(パエーリャ)でしょ!」という答えが返ってくるだろう。確かにスペイン料理の代表格であり、実際家庭料理としてもレストランのメニューとしても定番だ。
最近では生ハムの「
ハモンセラーノ」や冷製スープの「
ガスパチョ」を知る人も多くなってきた。ほかにジャガイモ入りオムレツの「
トルティーリャ」も代表的なものだ。
しかし他は?と問われて答えられる人はさほど多くない。実際スペイン料理の特徴を明確に述べるのは難しい。全体的に見れば、フランスとも似ているし、イタリアなど地中海岸全体に共通する特徴も多い。
パエーリャなどは、近隣諸国とは明確に異なる料理であり、かつ米食国の日本で大うけしたのが著名な理由だろう。
さて以上を考慮したうえで、
スペイン料理の特徴を消去法的に定義しよう。
@フランス料理より飾り付けが素朴。バターを使わない(乳牛が少ない)。
Aイタリア料理ほどパスタを使わない(小麦の生産量がより少ない)。 |
これは私の観察に基づくもので、異論もあるかもしれないが、当らずとも遠からずと思う。
@については17世紀以降、フランスの宮廷文化が全ヨーロッパを席巻し、
高級料理はフランス料理の形式に倣うようになったことが関係している(ある時期にはスペインの宮廷料理のレシピが全てフランス語で書かれていたこともある)。
スペインに限らず、ドイツなども地元料理は庶民の料理で、洗練されていないように見えるが、それには上で書いたような背景があったのである
付け加えると、
スペインでは地方ごとの個性が強いということも指摘できる。
それで私が食べた物に話を移すが、まず
パエーリャは2回だけ食べた。1度はコルドバ、2度目はマドリードである。
パエーリャは本来的には「
鍋料理」
、つまりホームパーティで振舞われるものらしい。レストランでもパエーリャは3人以上の客にしか出さないという所も多い。私が食べられたのはたまたま一皿料理としてメニューにあった数少ない例である。
パエーリャの本格的なものは大きなフライパンを使い、具は兎肉(鶏肉)、エスカルゴ、そして鞘インゲンがアクセント。ムール貝にレモンを添えれば、大ご馳走である。他に麺を使ったパエーリャもあるらしい。なお、発祥の地は東南部バレンシア地方である。
次に当然ながら
肉料理は多かった。ただ牛肉というのは少なく、
鳥、豚が多かった。ちなみに
スペインでは羊肉が最高ランクである(私は食べなかった)。
ハモンセラーノは付け合わせで出ることが多く、全て美味だった。 なお、マドリードなど中部スペインの代表的料理で「
子豚の丸焼き」(文字通り)があるが、やはり私には抵抗感があって食べなかった。
魚料理は、最初のバルセロナの夜とセビーリャで食べた。いずれも油で揚げた白身魚にソースをかけたものだ。セビーリャで食べた魚は英語名「
Turbot」と言い、店の人に実物を見せてもらったが、何の魚か見当が付かなかった。帰国後辞書で調べて「
カレイ」だったことを知る。いずれも美味かったし、肉食が多い中で有難かった。
スペインは欧州の中では魚が豊富で、日本人にとってはありがたい。
ただ一番多く食べたのは
バル(軽食屋)の一皿定食である。一枚の皿に肉、ポテト、サラダが揃って、パンが付けられる。こういうメニューは大抵ファーストフード店よろしく写真が載っているので正体が明らかである。ついでに言うと、
スペインのパンは一個がかなり大きく、密度が濃いので結構お腹にこたえる。バルには色々な定食があり、英語名も書いてあるので便利だ。
トルティーリャもバルで食べることができた。
ところでバルは本来酒を飲むところだが、私は大勢で飲むのが好きだし、あまり体を疲れさせたくなかったので、一杯の酒も飲んでいない。「
フランス、イタリアに次ぐ」
と言われるワインを試す機会はなかった。おつまみの「
タパス」もバルの楽しみだが、残念ながら食べてない。
最後に困ったことを挙げると、何と言っても「
油こい」ことだ。大抵の料理は油を使っているので、どう考えても体重が増える。
朝食からして、ハム、チーズ、卵など動物性蛋白の物を食べると思うと、量の調整は必要である。さらに
野菜の量と種類も日本と比べて少ないようで、この点も要注意である。
デザートでも、写真の
チュロースのように油を使っているし、砂糖の量も多い(余談ながら、バルセロナで食べた「
フラン(
カスタード・プリン)」はなんとも甘くて美味だった)。
まあ以上のことを考慮しても、
スペイン料理は美味だということは間違いない。
バラエティ豊かな各地方の料理も魅力的だ。詳しくは上で掲げた本を読んでほしい。何にせよ、体重管理は気を付けて(苦笑)。