◎「だって」(〜だよ) 〔多〕
・その日はバイトが入っとるんだって
・あそこにスッゴイおいしいお店ができたんだって
・昨日風邪ひいたもんで、行けんかったんだって
・昨日は大須の方に買い物に行ったんだって
・俺、別におかしな事言っとらんだろー!普通に言っとるだけだって
・本当は行きたいんだけどね、その日は仕事が入っとるからダメなんだって
・スゴイびっくりしたんだけど、昨日加藤晴彦が街歩いとるとこ見ちゃったんだって

現代名古屋弁の代表格がこれ↑。ほとんど共通語化されてる人もこれだけ!はしっかり使う
 よその人は「誰がやったの?」と聞き返したくなりそうだ。共通語では他人に聞いた事を伝える「伝聞」の意味や「だってば!」という強調の意味でしかないが、名古屋弁では(〜だよ)の意味で本当によく使われる。そのためたくさん例を書いた。もちろん「〜だよ」も使うが、「〜だって」はどちらかと言えば相手に言い聞かせたい場合に使う
 

名古屋市科学館。 巨大な球体のプラネタリウムが象徴。モノづくり技術な盛んな名古屋の特性を表すように、科学技術の展示が充実している。
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中日ドラゴンズは名古屋の象徴。写真は本拠地ナゴヤドームで行われた’99年の日本シリーズ第4戦(対ダイエー・ホークス)。


 純粋・名古屋弁で
「〜だて」という促音「っ」無しの語尾があったが、これが変化して用法が拡大したもののようである。
 その語源は『名古屋方言の研究』によれば、断定の助動詞「〜」+感動助詞「」であり、「文末に置いて軽く押さえて言うような意に用いられた」とのことで、元はさほど強い意味の文末詞ではなかったようだ。しかし『辞典<新しい日本語>』によれば、「もとは「〜だがだがんだに」などと言った;若い男は「〜だてだがあだぎゃあ」を使うが、若い女性が「だって」に変えた可能性がある」とのことで、他の文末詞の意味を吸収することで、「〜だってが最も強い意味を持つようになった様子がうかがえる。

(4) 名古屋では、今どんな風にしゃべってるの?
〜現代名古屋弁のしゃべり方 言い回し〜

だわ」(〜だよ)  〔多〕
・レポートの課題が出たんだわ。全然書けんわ。
・来週ナディアパークでコンサートがあるんだわ
・仕事でスゴイ忙しいんだわ

「〜だってとほとんど同じ意味だが、自分の気持ちを一方的に相手に伝えるというニュアンスである。。前者は若者が主として使うのに対し、これは老若共に使う。若者の場合、なんとなく男がよく使う気がする。
 『名古屋方言の研究』によると、由来は、断定助動詞「〜」+感動助詞「」、とのことで、「動作を強く断定する」意味があるという。しかし現在では前述のように、柔らかい語調の文末詞に変わっている。より強い断定詞は「〜だって」に取って代わられたということである。
 なお、「〜」は直接動詞に付いて、「行くわ」「やったるわ」のように、「自分の意志を強く表わす」ようにも用いられる(現在でも残っている)。



とる」(〜ている;進行) 〔多〕
知っとる?明日休みになったんだって。
・チーフが「早く仕上げろ」って言っとったよ
・来週、飲み会やるって言っとらんかった

かなりよく使われる名古屋弁の一つで、街中でも耳に付く。若い女性も使う。名古屋ではもともと「」を「おる」と言うので、それに則って動詞の進行形でも「〜とる」と言う。中部以西の西日本につながる言い方で、「名古屋弁が東西の中間的方言だ」という証拠の一つである。もっとも「〜てる」も共に使う人が多い
 ところで否定の「〜とらん」という言い方が名古屋でよく聞こえたので、驚いた記憶がある(三重県では言うことはあっても少ない)。



」(〜ない;否定) 〔多〕
・何回連絡しても来(こ)んよ
・普通そんなこと、言わんよねー
・暇がないから、行けんのだって。
・来週の予定、言っとかんでいいの?
・全然予定が立てれんかったわ。
・あたし、何にも分からんくて、スッゴイ恥ずかしかった。

これもかなりよく使われる名古屋弁の一つ。西日本とつながる言い方である。活用が上のように多彩なのが興味深いが、西日本の広い範囲で同様の傾向があるらしい。過去形の「〜んかった」は、以前「〜なんだ」と言っていたらしい。このような西日本の大部分で起こっているらしい。ただこれも、「言わないよねー」や「分かんない」のように「〜ない」と共に使う人が多い



しん」(しない) 〔少〕                              〔ノーマル:しない
・今度の日曜に野球しん
・そういう言い方、しん方がいいよ。
・俺、テスト前全然勉強しんかったんだって。やベーわ。

上と関連した言い方だが、別扱いにした。若者がもっぱら使う(特に男性)。中年以上はせん」と言う。
  「せん」+「しない」→「しん」
という具合に発生した言い方だと思う。最近は普通しない」と言い、たまにしん」を聞く程度である。



ーへん」(〜ない;強調否定) 〔少〕
・何書いてあるかさっぱりわっかーへん
・何回注意しても、全然反省しーへんもん!嫌になるわ。
・人が多過ぎて、全然はいれーへんかった

否定の強めた言い方。元は分かれせん」「入れせん」のように「〜せん」と言ったが、上のように変化した。ごくたまに聞く言い方である。

名古屋駅前に摩天楼が姿を現しつつある。

いかん、かんあかん」(ダメ)  〔多〕
・そういうことはさあ、ちゃんと言っとかないかんよねー
・今日は残業しなかんのだって。
・困っとるみたいだから、助けてあげなかんのじゃないの?

若者の間でも結構使われる言い方。明らかに西日本系である。もちろん「ダメと併用されている。あまり多くないが、「あかん」という言い方もする。
なお、なぜ二番と三番の例文のように「〜かんという省略形があるかというと、「〜いかん」のように後ろの部分にアクセントがあるためである。
 ところでかつては、「うめゃあでかんわ」のように感嘆する時に使う「〜でかんわ」の表現があったが(決して「うまいからダメだ」という意味ではない、念のため)、若者の間では全く使われていない。

栄の新しい名所「オアシス21」。右l後方はNHK名古屋放送局ビルと愛知県芸術文化劇場。
オアシス21を中心とした栄のビル群
「ビルに観覧車」で有名なサンシャイン栄ビル。この辺りにSKE48の劇場がある。