2.
進学にせよ転勤にせよ、これから名古屋に来る人は名古屋弁をしゃべるべきか否か迷う人もいるだろう(いないかな?)。 しかし上で書いたように「名古屋弁は共通語(東京弁)とボーダレス化」しているので、「東京弁」ぽくしゃべっても目立つことは全くない。名古屋人自身、名古屋弁に愛着を持っていない人が多くなっている。名古屋では、関西のようにどこでも方言が話されている状況を想像すべきではない。今の名古屋は完全に「共通語主流社会」になってしまっている。 ただし、少しでも名古屋になじみたい人はB〜I(Gを除く)の特徴を覚えておいても損はないと思う。 |
(1)
名古屋に行っても、よその人は「名古屋弁が聞こえない」としか思えない。都市化に伴って、かなりの度合いで共通語(東京語)に接近・融合してしまっている。第一の特徴だった発音は全く共通語化し、元々アクセントも「東京式」だったので、名古屋人は共通語っぽく話すことに抵抗感がない。中心部の、特に若者の間では、普段の友達同士の会話でも「東京語」に近づけた話し方がベース になっている。だからよそ者が共通語でしゃべっても、目立つことは全くない。筆者は「名古屋のことばは共通語(東京語)との境界線を失った(ボーダレス化)」と考えている(下の参照、この要因の考察は(6)参照)。名古屋人の間では、B以下のような特徴が所々現れる。しかしその場合でも方言形と共通語(東京語)形が併用され、両者の混在状況が見て取れる。
名古屋の繁華街・栄の情景。そこで話されていることばとは・・ |
:名古屋弁と共通語の境界線消失(ボーダレス化)
過去
現在
発展する名古屋の象徴、JR名古屋駅前のオフィス街。その発展と共に、そこのことばも移りゆく・・。 |
この章では、「新・名古屋弁」すなわち「今、名古屋の街中で広く使われている話し方」を紹介する。「今」とは、「私が名古屋に来た1990年代半ばから、2006年現在まで」を指す。なるべく方言色の濃い話し方を紹介しつつ、共通語形≒東京語形との混じり具合についても触れていく。
「ひょっとして今が東京語に完全同化する途中経過かもしれない」とも思うが、東京語と名古屋弁がせめぎ合っている現状の報告と考えていただきたい。
有名な名古屋弁「〜がや」「〜がね」の末裔。「スゴイ安いがー」「そんなの無理だがー」という風に使う。必ずしも「がー」と伸ばすわけではなく、軽く「〜が」と付ける場合もある(例:「良かったが、受かってて」)。ただし使われるのは親しい友達同士の間だけで、公の場では使われにくい。名古屋の中心部ではほとんど「〜よね」「〜じゃん」に置き換えられている。
理由の接続詞。もともと「雨が降っとるで、中止だわ」というように「〜で」が主流だったが、名古屋中心部では完全に共通語形「〜から」に置き換わっている(周辺部ではたまに「〜で」も聞かれる)。「〜もんで」の方は、「昨日は疲れとったもんで」「だもんでさー」という具合に若者の間でもかなり使われる。
それぞれ「疲れた」「自転車」の意。いわゆる「気づかれにくい方言」の単語や新方言単語が若者の間でもかなり使われている。よその人が「?」と思うことも多いので、一応覚えておこう。
否定の言い方。共通語の「〜ない」に当る。Dと共に若者の名古屋弁に残る二大特徴。「分からんくて」「できんかった」のようにも使える。これも共通語形「〜ない」と入り混じって使われている。
「だめ」→「いかん」と言う。結構よく使われる。共通語形「だめ」と併用する人が多く、「だめ」の方がよく使われているかもしれない。