朝と夜。「めーえき」周辺オフィス街、2つの光景。夜のイルミネーションは良く映えて美しい。
大須商店街。全国的に見ても「元気な商店街」として活気がある。伝統的な商店とパソコンショップが共存している。街歩きも楽しい。

「(机を)つる」(机を運ぶ?) 〔多〕
・ここの机つっといて
・まず机つってから、掃除しよう。

東海地方全体で広く使われる。筆者も含めて東海地方人は「『机をつる(吊る?)』以外にどんな言い方があるんだ?」と、他地方の人に言うことは多い。「気づきにくい方言」の一つである。

ケッタ」(自転車) 〔多〕
・ちょっと遠いから、ケッタで来(こ)やー。
ケッタ置き場どこにあるの?

若者の間で広く使われる。静岡県西部(浜松付近)も含めて、東海地方の大部分で使われている(「『ケッタ』の分布範囲を探る」なんて企画を東海ローカルの情報番組『ミックスパイ下さい』(CBC,TBS系)でやってたことがある)。
 ただし「スラング」的な単語なので、改まった場所や目上の人の前では使えない。
 語源には未だ定説がないが、「(自転車を)蹴(けっ)たくる」と言うところから来た、というのが有力な説である。昭和50年ごろに出現したらしく、それ以後名古屋都市圏を中心に広まった。上の例のように「ケッタ置き場」とか「ケッタ屋」とは言えるが、ママチャリを「ママケッタ」とは言わないのが複雑なところである(これはそのまま)。
 これも最近では全国の多くの地域と同じく「チャリの方が多くなり、「ケッタ」はすたれつつある。

めーえき名駅)」(名古屋駅) 〔多〕
・待ち合わせ場所は、めーえきの高島屋の前にするで、連絡しとくわ。
めーえきの近くにすっごい美味しい店ができたんだって!

方言とはいえないが、よく使われるので取り上げた。これの認知が、名古屋になじんでいるかどうかの「リトマス試験紙」になっている気がする。名古屋に転勤してきた人はすぐに覚えましょう!(知らなければ、地元民は「名古屋駅」と言い直してくれるけど)。
 名古屋では「名大(めーだい)」「名城(めーじょう)」「名港(めーこう)」のように省略する単語が多いが、広く使われるのは「名駅めーえき)」と「名大めーだい)」ぐらいである。余談だが、首都圏の「めーだい」(明治大学)の生徒から「めーだい』と略すのはやめろ!『なだい』にしろ!」と言われて、名古屋大学の学生がいたく憤慨したらしい(東海地方で「めーだい」と言ったら当然のごとく「名古屋大学」)。「阪大(はんだい;大阪大学)」「神大(しんだい;神戸大学)」「金大(きんだい;金沢大学)」と同様の省略法であり、「めーだい」も不自然とは言えないだろう。

でら、どら、でれ」(とても、非常に) 〔中〕         〔ノーマル:すごい、むっちゃ
でらうめーがー、これ!
・ここの店の物、でら安いじゃん!
・俺、テスト前に勉強しんかったから、どらやべーわ。
・急に予定変えるんだもん。どらムカついたわ。
・○○○って、でれ可愛いと思わん?

1995年ころに東海地方限定ビール「でらうま」というのが売り出され、当時の中日監督・星野仙一がCMに出ていた。名古屋弁の代表格「どえりゃあうみゃあ」は若者の間で「でらうめー」に変わったのである(「でら」は「デラックス」に通じているのだろうか?)。「どら、でれ」も「どえりゃあ」の変形だが、筆者は「どら」を一番よく聞いた気がする。「〜がー」と共に若者名古屋弁の代表として有名になりつつある。
 ところでこれらは自分の気持ちを最も強調する時に出てくるもので、普通はすごい、むっちゃ」が使われている。だからよその人はよほど注意していないと、これらの言葉を聞くことができない。若者の男女共に使うが、最近女子高生などで東京式に「ちょー」を使う人が多くなっているようで、気にかかるところである。
春を待つ名古屋城

(5)この言葉、どういう意味?〜名古屋弁の単語集〜

リニア館。東西交通の要衝である名古屋にふさわしい鉄道博物館。歴代新幹線やリニアなど、鉄道ファン垂涎の展示を目当てに全国から人が集まる。
巨大なUFOを思わせる外観のナゴヤドーム

@東京から来た女の子が、皆からやたら「えらいよねー」だの「えらかったでしょー」と言われて、「何ほめられてるんだろう?」と首をかしげていたが、彼女も意味が分かると「なあんだ」と多少がっかりした口調で合点していた。逆の反応を引き出すのが最後の例文。中日新聞の投書欄に、静岡の人にこういったら、「私、別に偉そうにしてないよ!」と反発された、という話が出ていた。

A東京の会社に就職した筆者の友人(一宮市出身)が入社した頃の出来事である。危うく遅刻しそうなところ間に合って同僚とのやり取り。
友人「はしってきたから、めっちゃえらいわ
同僚(冷たく一言)「なにが、偉いの?
友人「いや・・その・・・大変だったよ・・・」
この同僚氏は「全然偉くないだろ」と突っ込みたかったのだろうか・・。(BBSのちゃみさんの書き込みを掲載させていただきました)

しかしこの手の「勘違いし易い方言」の話は、地方に行けば当然起こりうることだろう。誤解から悪い展開になることも多いだろうが、逆に新鮮な驚きを引き出すこともあるのだから、「誤解されるといけないから、方言はやめよう」などという安易な結論にはどうしても賛成できない。要は慣れればいいだけだと思うが・・。なお、「偉い」はもちろん「えらい」と言うが、この地方の人は文脈によってどちらの意味かを判断しているのは言うまでもない。
 

次ページへ
えらい」(疲れた、大変な) 〔多〕
 ・昨日全然眠れんかったもんで、スッゴイえらいんだって。
 ・体がえらくてたまらんかったもんで、起きれんかったんだって。
 ・仕事えらかったでしょー。ちょっと休みゃー。
 ・体えらそうだね。どっか悪いの?

勘違いし易い名古屋弁第一位」に選ばれるであろう言葉がこれ↑。使用頻度も高く、よそ者を大いに戸惑わせる言葉であるだけに、注意しておきたい。名古屋だけでなく東海地方で広く使われる。三重県でも使われるので、筆者には違和感はなかった。この言葉がもたらした笑い話(実話)を2例紹介する。
愛知県庁名古屋市役所。名古屋城の近隣に位置する。「帝冠様式」と言われる和洋折衷式の建築で、大正から昭和初期の代表的建築物。映画の撮影でもよく使われる。

ほかる」(捨てる、放っておく) 〔中〕
・ゴミほかる場所ってどこ?
・これもう使えんから、ほかっときゃー
・ここにほかってある本、誰の?

愛知県では広く使われる言い方。三重県では使わないので、最初は「?」と思った。もっとも「捨てる」と併用されている。

ドベ」(最下位、びり) 〔多〕
・中日、オープン戦でドベじゃん。やべーがや。
・絶対ドベになりたねえんだって。

東海地方で広く使われている。「ドベ」使用者にすると、『びり』よりも『ドベ』の方がいかにも「最低で、どん底の状態」を語感的に表しているようでしっくりくる(ドベになるのは嫌だが)。もっとも全国的に見るとかなり色々な地域で使われているようで、そのせいか結構あちこちで通じる(TVで江川卓も使っていた)。

「これが新・名古屋弁だ!」の先頭へ

鍵をかう」(鍵をかける) 〔中〕
・最後に出る人は鍵をかっといてね。
・ヤバイ!鍵かっとくの忘れとった!

分布範囲は詳しく知らないが、愛知県では広く使われていると思う。「鍵をかける」ももちろん通じる。これも三重県では使わないので、違和感ありあり、だった(て言うか、未だに慣れない)。筆者などは「鍵は『かける』物であって、『かう』物とは違うやろ」などと言いたかった。