アクセント)
ほとんどの地域がである。単語ごとのアクセント調査でも、京都・大阪など関西弁と9割以上が一致することが分かっている。語法も含めて伊勢方言が「近畿方言」に属する大きな要素となっている。これによって他地方の人には関西弁と区別がつかない。
丁寧語を話す時に共通語的な語法にしても、アクセントだけは関西式のそれを保つ人が多い。元知事の北川正恭(現・早稲田大教授)の口調にその特徴がよく現れている。このアクセントにより、安易な東京語への接近・融合を防いでいるということが言える。
また、東京式アクセントが大部分の東海地方ではかなり目立つことは間違いない。実際、私が愛知県の大学に入った時、地元の方言で話していたところ、先輩(愛知県出身)から「どうしてそんなに訛るの?」と言われたことがある。自分のことばが「訛っている」とは思ったことがなく、少なからずショックだった。
大学で音楽関係のサークルに入っていたが、コントラバスを弾いている友達に手助けしようと、後片付けの時こう言った。
「ゆみ(弓)、持ってたるわ!」
すると、大笑いになった。近くに「ゆみちゃん」という子がいたからだ。 私も「しまった」と思ったが、後の祭りで苦笑するしかなかった(笑)。 |
若い世代のアクセントで特徴的なのは
「
そうなん↑(そうなの)?」
が「
遭難」と同じように、
平板で尻上がりに発音されることである。これが他地方の人にはかなり耳につくらしい。ただし従来は「
そうなん?」と発音されていた。平板なアクセントになったのは発音の省力化のためだろうか。
なお、
愛知県に接する地域のである。
アクセントの境界線は長良川と揖斐川の合流地点にあることがこれで分かる。
音便)
近畿方言に属するので、ことが伊勢方言の特徴となっている。この点は関西弁と一致する。
形容詞のウ音便とは、「暑く → 暑(あつ)う」「高く → 高(たこ)う」と発音することで、現在は具体的に
・今日、むっちゃ暑(あつ)ない?
・そんなに高(たか)ないで、買えるわ。
のように使われる。これは東海・東山方言の愛知、岐阜でも使われる。
しかし近畿方言では、動詞のウ音便も使われるのが特徴的だ。「言った → 言(ゆ)うた」「買った → 買(こ)うた」「もらった → もろうた」というのがその例である。具体的な使用例は下の通り。
・来週、予定入っとるって言(ゆ)うとったやろ?
・必要なもんは今のうちに買(こ)うとかんとあかんで。
なお「もろうた」は「もおた」と言うことが多い。
ところで上に関連して、愛知・岐阜では「言(い)っとる」と言うのに対し、三重県の伊勢は「言(ゆ)うとる」と言うので、違いがはっきりする。
ただこれも若者の間ではやや衰退している。