図表3.1 :岐阜県 全体地図と地域区分 |
岐阜県内の区分けは、ちょっと複雑・・。「飛騨」は旧国そのままの領域で分かりやすい。一方で「美濃」の方はややこしい。日常生活ではもっと細かい地域のまとまりが強いからだ。このページでは、『日本方言辞典』(小学館)や『岐阜県方言の研究』(大衆書房)を基に、下表のような方言区分を採用した。この区分は"文法"によるもので、本HPの主旨に沿ってのことである。
図表3.2:旧・美濃国内の地域区分
西美濃 | 岐阜市、大垣、羽島、各務原、美濃市、関、美濃加茂 |
東美濃 | 可児、多治見、土岐、瑞浪、恵那、中津川 |
北美濃 | 郡上 |
しかしこの区分けにも異説があるのだ。『現代日本語方言大辞典』(明治書院)では「岐阜市、美濃市と美濃加茂市、さらに郡上を加えて「中濃地方」とし、それより西の大垣市などを「西濃地方」とする」という方言区画が採用されている。これは主として”方言語彙(俚言)"による区分で、かなり妥当性がある。この区分けは行政的にも使われることが多い。
だから筆者も迷ったのだが、結局上のように区分けした。美濃市などは一般的には「中濃地方」だが、上の区分に従い「西美濃東部」と呼称し、適宜説明を加える。郡上は扱いが難しいが、「北美濃」ということで別扱いし、コラムの形で取り上げることにする。
あと地域の呼び方も、日常的には「西濃」「東濃」などの略称が使われるが、県外の人には分かりづらいと思うので、上のように統一する。
岐阜県は、滋賀県の東隣である。つまりけっこう関西に近い。だから、東海・中部地方の中ではのである。
断定の語尾は中部地方の中では例外的に「〜や」である。『〜近世期方言の研究』などによれば、岐阜県方言の断定語尾は、江戸中期まで尾張と同じく「〜でや」(「〜である」の省略形)だったらしい。それが京都からの絶えざる影響によって次のような変遷をたどったという。
「〜でや」 → 「〜じゃ」 → 「〜や」
3.4 飛山国紀行 飛騨弁散歩
JR岐阜駅。 岐阜県の旅はここから始まる。 |
3.1
断定辞が現在の「〜や」に落ち着いたのは大正から昭和にかけてらしい。「やろ」「やでさー」などと言うので、「関西人に間違えられた」とこぼす岐阜県民は多い。もっとも関西弁と同種のことばを話す三重県民の私は
「『あるやろ』(黄色部分が高アクセント)なんて中途半端な関西弁」
と思った。東京式アクセントで「やろ」というのがミョーな感じだったのだ。
念のため言っておくが、これは一部の特徴ではなく、岐阜県全体的な特徴である(県の東南部の一部では「〜だ」と言うらしい)。
全国で7番目の面積を持ち、県内も山また山また、という山国である岐阜県。意外に思うかもしれないが、。隣の長野・富山・滋賀あるいは愛知といった県外の方言とは、はっきりした違いがある。その一方で県内の方言は共通の特徴を多く持ち、一つのまとまりを作っている。
もちろん全部が全部まったく同じ、というわけではない。大雑把に「西美濃」「東美濃」「飛騨」の3つに分けられる(後のページでもこの区分をもとに、それぞれの特徴を紹介する)。しかしそれらはあたかも”グラデーション”のように、少しずつ変わっていくもので、はっきりした境界線で区切ることができないのだ。「隣り合う地域ではあまり違いはないが、遠くの地域とは大きく違っている」というのが、岐阜県のことばの全体的特徴なのである。
以下のページでは、上の3つの特徴を頭に入れてもらいながら、イメージしてもらいたい。
目次
3.1 岐阜県のことば 全体イメージ
通説の東条操の方言区分によれば、岐阜県全体の方言が「東海・東山方言」に入る。つまり、長野・静岡・愛知と同じ方言グループに入る。岐阜県の方言は、大きく見てである。
全体的に共通の特徴を見つけるのは難しいが、「東日本と西日本の中間的方言」「関東的特徴から関西的特徴へと徐々に移り変わる」というふうに説明される。
あとアクセントは全体的にだから、そのつもりでイメージしてほしい。