「〜ん、ーへん、へん」(〜ない;否定)
・絶対行くって言って聞かんのやてー。
・しばらく待っとったんやけど、全然連絡が来んかったんやてー。
・バイトが忙しかったから、全然勉強しんかったんやてー。
・こんな天気じゃ、野球なんかできーへんわ。
・ 明日休みやから、名古屋の栄に行かへん?
否定形は、西日本型の「〜ん」が主。名古屋と違って、共通語形「〜ない」が併用されることは無いらしい。例文4番目の「できーへん」は、もともと「できせん」と言い、名古屋弁と同様の、岐阜弁固有の否定形が変化したものである。「しーへん」(しない)「見ーへん」(見ない)のように、伸ばす形が一般的で、まれに「できへん」のように短くすることもあるようだ。
最後の例文の「行かへん」はおそらく関西弁から来た言い方だと思う。この「〜へん」はもっぱら誘い文句だけに使われるようで、使用頻度は低いらしい。
「〜やない」(〜じゃない)
・まさか、ホントにやるつもるやないよね?絶対できんて!
・明日、ミーティングがあるんやないの?
・結果発表は今週やないよ。
・そんなこと言っとる場合やないやろ!
岐阜弁では、「〜じゃない」⇒「〜やない」、と自動変換される。「〜じゃない」が使われることは少ないようだ。
念のためインフォーマントに聞いた所、関西弁のように「〜ちゃう」が使われることは断じてありえない、という。
(3)
〜「岐阜弁」の話し方・言い回し・単語集〜
「〜とる」(〜てる;進行形)
・今、準備しとるところやよ。ちょっと待っとってね。
・だから、早よやらなかん、って言っとるんやてー!
・だよね!誰でも知っとる話やんねー。
・まだ、到着しとらんみたいやよ。
・雨降っとったで、タクシー乗って来たんやて。
名古屋弁とも共通するが、岐阜市でも進行形は「〜とる」である。名古屋と比べると、共通語「〜てる」と併用することは少ないらしい。
ところで関市や美濃加茂など西美濃東部(「中濃」とも呼ばれる地域)では、一部で「〜ちょる」と言うらしい。これは中国・四国・九州の一部でも使われる表現だが、岐阜市の近くでも使われているとは驚きだ・・。さらに驚くべきことに、岐阜市でも!昔使っていたことがある、と文献に書いてあった・・。
「〜やて、やって」(〜だよ) 〔多〕
・昨日、バイトに行ったんやてー。
・目が冴えとったで、全然寝れんかったんやって。
・そんなことしとるで、時間がなくなってくんやてー。
・やよね(やんね)!そう思うよね。やで、あたしも言ってやったんやって。
・こんなことしたら、ダメやてー!
新・名古屋弁の「〜だって」が、岐阜では「〜やって、やて(ー)」になる。これは若者の間で非常によく使われるが、「〜やて(ー)」については岐阜弁の元からある言い方である。上の「〜やよ」よりは語調が強い感じがする。「自分の主張を相手に言い聞かせる」というニュアンスがある。付け加えると、名古屋弁の「〜だがや、だがね」は(〜だよ)の意味を持っていたが、岐阜弁では元より「(〜だよ)の意味で「〜やがや、やがね」と言うことはない。その場合は「〜やて」あるいは「〜やわ」になる。これが名古屋弁との大きな違いといえるだろう。
バラエティ番組でタレントの熊田曜子(岐阜市出身)が |
ところで、岐阜市の若者は、文頭の相づちで「やよね(やんね)!」と言うが、私が取材した際に「〜だよね」を使う女子高生も見受けられた(文全体では、(〜だよ)→「〜やて、やって」のように岐阜弁色が強かったが)。メール欄での地元出身の大学生が「「〜だよね」は一部の傾向であって、若者でも「〜やよね、やんね」が主流」と指摘してくれた。
「方言を保ちつつも一部では共通語(東京語)形を取り入れる」という岐阜市の若者の傾向がここに反映されているのだろう。
「〜やよ」(〜だよ) 〔多〕
・そうやよ。明日の天気、雨やよ。
・そんなん無理やよ。できるわけねえって。
・もう夜中やよ。早よ寝やー。
・スゴイ面白い所やよ。あんたも行ってみやー。
・そんな所におったら、邪魔やよ。
・来週は忙しいで、来れんみたいやよ。
岐阜では、共通語(東京語)形の「〜だよ」が使われることは、ほとんどないらしい。これは全て「〜やよ」という形に自動変換される。相手に軽く自己主張する場合に使うようだ。「〜やお」に変化する場合のあるらしい(例:あたし、もう中学生やお)。中年以上は「〜やわ」を使う場合が多いが、これを若者が使うことは全くと言っていいほど無いそうだ。
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岐阜市中心街の「柳が瀬商店街」。美川憲一の「柳が瀬ブルース」で全国的に知られるようになった。ギリシア風の彫像が据えられているのが風情がある。 |
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長良川河畔近くにある川原町(岐阜市)の町屋。この一帯は、近年伝統的な街並みを整備しつつあり、土産物屋やお洒落なカフェが軒を連ねている。 |
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金華山麓から望む岐阜城。この辺りに「岐阜市博物館」があり、戦国時代の展示も充実している。 |
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金華山上に立つ岐阜城天守閣。斉藤道三が築き、織田信長が天下統一の拠点とした(安土城移転まで約10年在城)。 再び巻き起こった「信長ブーム」で大勢の見学客が訪れていた。 |
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2009年に建てられた黄金の織田信長像。再開発された岐阜駅のターミナルを飾る。よく映えているが、言われているほど不調和ではない。 |