多治見市のオリベ・ストリート。美濃焼を発展させた桃山時代〜江戸初期の武将・古田織部にちなむ。
 黒壁を基調にした土蔵スタイルの建物が映える。交番も土蔵スタイルである(写真下の中央、左はたじみ創造館)。
セラミック・パーク(多治見市)。 中庭の噴水場の周りにはレストラン、茶室もあり、落ち着いた雰囲気の中で楽しめる。
虎渓山永宝寺(多治見市)。観音堂や開山堂は国宝に指定され、寺内の池泉回遊式庭園もまた国の名勝に指定されている。
恵那峡恵那峡ランド。東美濃の代表的観光地である。
 大正時代に木曽川の水をせき止めるためのダム建設によって形成された人造湖。

「〜やよ、 やてやって)」  (〜だよ)
郵便局やったら、向こうやよ。そっちに行けば見えるって。
あそこで買ったら、スゴイ高いみたいやよ
こないだ久しぶりに行ったら、あそこの店つぶれとったんやて。ビックリしたわ。
 昨日は雨降っとったで、中止やったんやて
首都は東京から東濃に来るんやてー
そんなこと絶対無理やてー。やめといた方がいいわ。

東美濃西部においては、西美濃の「岐阜弁」と同じく(〜だよ)を「やよやって」と言う。ただし、両者の間では若干の意味の違いがある。「〜やよ」は、相手に構わず自分の主張を一方的に言う場面で使われることが多い。一方「〜やてやって)」は、どちらかと言うと相手に言い聞かせるというニュアンスがある。また「〜やよ」は、主として若年層の言い方で、とりわけ女子の使用が多いという(逆に男子は「〜やて(やって)」の使用が多いとのこと)。では老年層でどう言うかというと、「〜やにやわ」だったらしい(『岐阜県方言の研究』所収の会話資料による)。どちらも若者が使うことは無い。

 なお、東部では「〜やよ」ではなく、「〜やにを使うという。さらに断定文末詞が「〜」である東南部の岩村・明智(恵那市南部)では、「〜だよだってだに」を使うようである。

東美濃の方言って、どう話すの?

「〜やろやろう」  (〜だろう; 推量)
何でやろ?これで動くはずやと思うけどね。
多分行けんやろうと思うわ。悪かったな。
そうやろうね。これは修理した方がいいと思うわ。
忙しいやろうけど、手伝ってくれん?
そんなこと、言っていいわけないやろー

東美濃においては、推量でやらー」と「やろうが併用されている。「〜やらーは確実な推量、あるいは同意確認の意味しか持っていない。上で「共通語の「〜だろう」が機械的に「〜やらー」に変換されるわけではない」と述べたが、その理由はこういうことである。

同意確認以外の推量では「〜やろ)」が使われる。ただ2番目と3番目の例文については、かつては「〜やらあ」が使われていたらしい(「行けんやらあと」「そうやらあね」)。現在「〜やらーは文末の言い切り形でしか使えない

語調の強さ比較については、インフォーマントに質問したが、一概には言えないという。私の考えでは、大雑把ながら次のように表わせると思われる。

     やろ < やら) < やろう

最後の例文がもっとも語調の強い言い方の例である。岩村明智では当然ながら「〜だろう」を使うと思われる。

(3)

〜東濃弁の話し方・言い回し〜

「〜やら)」 (〜だろう、だよね、でしょう; 同意確認)
 明日テストやら。あたし、何も勉強しとらんよ。
来週は都合悪いって、言っとったやら。だったらいつがいいの?
今朝変な事故で渋滞しとったやらー。そのバスに乗っとったで、スゴイ焦ったわ。
これ格好いいやらー。買った方がいいと思わん?
ほやらー。どう考えても間違っとるやんね。
そんなわけないやらー。もう一遍考え直せよ。

東美濃方言の最大の特徴。「東濃弁」、ひいては東美濃地方の特色を表わす代名詞的フレーズになっている。ほぼ全年層で用いられている。岐阜県の他の地方では全く使われないので、非常に特徴的である。特に「ほやらー」を女子学生が言うと、非常に可愛くてよいと思う(←カンケー無い!)。
 
 「〜やらーの語源としては、(1)で述べたように「〜ずらの名残と考えられるが、もう一つ古典文語の「〜にてあるらむが次のように変化して形成されたとも考えられる。

  にてあるらむ → であるらむ → であらう → じゃらあ → やらー

東美濃一帯では「あー」と長音化する発音癖があり、「であらう → じゃらあ」の変化もその一環と考えられる(より確実な推量としては、「であらうず」という言い方があった)。もちろん「〜ずら」に引きずられたとも考えられ、この2つの要素が絡み合って「〜やらー」が形成と考えるのが妥当だろう。

 なお、東美濃東部では動詞や形容詞には「〜らーを付けるようである(「言っとったらー」「格好いいらー」のように)。それが同じ東美濃でも西部と東部の大きな違いだ、とインフォーマントは語っている。また東南部の明智(恵那市南部)では、上の事情により「〜だら)」を使い、三河(愛知県東部)に連続する(岩村では「〜やら」を使っている)。

 一つ注意しておかねばならないのは、共通語の「〜だろう」が機械的に「〜やらー」に変換されるわけではないということである。「〜やら」はあくまで「確実な推量」もしくは「同意確認」の意味しかない。そのことについては、下で述べる。

この小節では、東美濃方言の話し方・言い回しを紹介する。 インフォーマントに従って、多治見土岐瑞浪など東美濃西部の言い方をメインとするが、 恵那中津川など東部についても補足的に紹介していく。
 西美濃の「岐阜弁」と共通点も多いが、それについては割愛し、異なる特徴について重点的に説明する。

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