岡崎市中心街。岡崎城に面する国道一号線付近がメイン・ストリートである。
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カクキューが経営する”八丁味噌の郷”。岡崎伝統の八丁味噌を伝統的な方法で造ると共に、見学ツアーを行っている。味噌蔵は『純情きらり』のロケでも使われた。
岡崎城天守閣が今日も街を睥睨する。下は城の前を流れる乙川の噴水。毎日数回水を噴き上げることで水質を浄化している。
吉良町宮崎海岸(通称、ワイキキビーチ)の光景。「海の三河」の拠点として三河湾の海上交流で栄え、現在は沿岸リゾートの場となっている。この周辺は吉良上野介の領地であり、その史跡が点在する。

◎「〜(」(〜しなさいよ;命令)
・そこ空いとるで、座りん
・これ食べりん。美味しいよ。
・渋滞するだろうから、電車でおいでん
・これもう使えんから、ほかっときん
・何やっとるの〜。だからあたしが早よ行きんって言っとったじゃん!!
・ちゃんとやっときんよ

三大三河弁、最後の一つ。これは周囲とは異なる、三河弁独特の言い回しである。終止形を「〜」で終わる動詞は命令形が「〜りん」となるが、外の人からすれば「〜りん」はかなりカワイイ語感である。他の動詞は「〜」を付ける形である。「来なさい」は「おいでん」と言うのが多いが、話者によっては「来りんきりんこりん)」とも言う。ところで豊田市の夏祭りで”おいでん祭り”というのがあり、「おいでん 見りん おどろまい」と歌うらしい。

下から二番目の例文は、私の実体験である。大学時代にある書類を提出し忘れた時、豊田市出身の女の子からこのように怒られた。今ではいい思い出である(笑)。

 その語源は、広島弁のように敬語的な命令形を「〜(んさい」というところから来たようである。私が調べたところ「食べりんさい」という例は見なかったが、「お書きんさい」という実例があった。もう一つ、三河弁の一大特徴である「文末に「〜を付ける所から来たということも考えられる。下の例のように「〜」「〜を文末に付ける場合もある。なお、これは地元の親しい者同士で使う言い回しで、三河の人は外に出ると共通語的に「〜なよに置き換える傾向がある。
 
 付け加えると、命令形には他に「〜(っせという表現もあり、西三河の各地に分布している(座らっせ食べらっせ等)。今でも老年層で使う人が時々見られるという。『愛知県の方言』によれば、三河弁の敬語表現は「〜(っせる」なので、これから派生したことは明らかである。「〜(」よりも尊敬・丁寧の度合いが強いようだ。



「〜じゃんね」(〜だよね)
・ほだらー!絶対そう思うじゃんね
・俺、明日バイト入っとるじゃんね。だもんで、行けんわ。

名古屋弁のページでも述べたが(2(4)参照)、むしろ三河が本場らしい。使用地域は東海地方静岡も含む)の広い範囲で使われ、使用地域の話者の間では共通語だと思われている(使用頻度も高い)。「〜じゃんから派生したことを考えれば、上の例文のように本来は「〜だよねの意味で、相手の了解を求める言い回しのはずだが、下の例文のように相手が知らない事柄すなわち「〜だよ」の意味でも用いられることも多い。当然よその地域の人は「そんなこと、知らねーよ!」と言いたくなる。東京語「〜だよね」も最近の若者は、相手が知らない場合にも使うので、それと軌を一にしているのかもしれない。若者が主に使うが、中年層でもいくらか使われるという。
 なお、三河弁としての「〜じゃんね」を様々な角度から分析したものに、吉原美和「文末表現「じゃんね」の研究」(『言語文化』2000年3月号、愛知淑徳大学、所収)がある。



「〜がやがん」(〜わ、感嘆)
・やべえがや。雨降ってきたのに、傘持ってきとらんわ。
・もうバス、最終が出とるがや。タクシーで帰らないかん。
・今頃気付いたって、意味無いがん
・毎年ドベだったら恥ずかしいがん。もうちょっと頑張りん。
・暑くなってきたげ〜。もう耐えきれん。
・腹立つ。全然問題が解けんかったげ〜

自分の感情を込めた時の語尾であると共に、相手の同意を確認する場合にも使う(後者は「〜じゃん」と同じ意味である)。「名古屋弁ではないか?」と突っ込まれそうだが、三河弁でも使う。これは『豊田市の方言』でも使用例が多く見られるし、インフォーマントへの取材でも確認できた。老年層は「〜じゃんよりもむしろこちらを使っていたらしい。「〜じゃんか」の出現が大正頃と思われるので、「〜がやがんの方が古い由緒を持っているのは間違いない。「〜がん」というのはまさに三河弁の特徴であろう。名古屋弁とも共通しているのも、近隣地域だから不思議はないと思われる。
 ただし名古屋弁に比べ使用頻度は低い。さらに名古屋弁のように「〜だわの強調形として使うこと(だよの意味)は全く無い
 「〜」は「〜がやの変形で、若者が主に使う。ただし自分の感情を一方的に込めるという意味しかない



「〜(?」(〜なの?)
・そうなん?だったら、やめといた方がいいだら。
・もうやっとるん? 俺も今から行くで待っとってよ。

刈谷のインフォーマントは「使わない」と言ったが、岡崎のインフォーマントは「時々使う」という。関西弁でよく使われる表現だが、三河弁の一大特徴である「文末に「〜を付ける」の名残りと思われる。



「〜まい」(〜しようよ;誘い)
・今日は久しぶりだで、飲もまい
踊ろまい。楽しいよ。

誘いの語尾。名古屋や岐阜など東海地方の広い範囲で使われる。三河でも使われるが、やはり全体的な共通語化の中で、若者の間で使用頻度は低下している。ただ親しい友達同士で感情込めたやり取りではよく使われるようだ。



「〜?」(〜か?;疑問詞)
・これ、置くのどっちだったやー
・準備はこんなもんでいいかやー
・飲み会どこでするやー?考えとかないかんだら。

疑問の文末詞。共通語の「〜」に当る。「誰やー?」「どこやー?」のようにも使える。文だけ見ると、関西弁と勘違いしそうだ。



でれ〜」(すごく、とても〜)             〔ノーマル:すごいむっちゃ
・あのタレント、近くで見るとでれ可愛かったんだって。
・遅くまで残業したもんで、でれえらいわ。
・昨日の試験、でれ難しくて全然分からんかったんだわ。

でら〜」とも言う。もちろん「どえらいの変形である。西三河一帯の若者の間で使われる。これも名古屋弁と共通する特徴である(確証は無いが、おそらく名古屋から取り入れたもの)。
 もちろん、これは「地元の友達同士の会話で感情を込めた時に使われるもの」であり、通常はすごいむっちゃ」が使われ、街中で「でれでら〜」が聞かれる機会はかなり少ない