この章では、愛知県東部の方言”三河弁”について述べていくのだが、その前に、、という疑問の答えを言わねばならない。
両者は隣り合っているし、「東海道」という主要街道が通っているのになぜ?、と言いたくなるだろう。司馬遼太郎は『街道をゆく』で両者の対照的な気質について「尾張は商業が盛んで、人はやや功利的」に対し、「三河は醇乎たる農村地帯」と述べているが、信長・秀吉の尾張 VS 家康の三河、というイメージとかなり重なり合う気がする。
言語に話を戻せば、まず両者の違いは表題にあるように「”みゃあみゃあの名古屋(尾張)」と「”じゃんだらりん”の三河」とよく言われる。これは両者の本質的違いをたくみに言い当てている。という性格付けができよう。よく使われる例を挙げると、名古屋は「そうだがや、食べやあ」というのに対し、三河は「そうじゃん、食べりん」のように言う。また『愛知県の方言』から(まあ、上がってください)という意味の例文を引用する。
尾張 | まあ、上がってちょーであー |
三河 | まあ、上がっておくれん |
尾張 | 西三河 | 東三河 |
そうだなも | そうだなん | そうだのん |
三河最大の都市・豊田市(人口42万)の駅前の光景。言うまでもなく、トヨタの本拠地である。 |
目次
5.1 「三河」って、どんな所? 〜三河の地理的特性〜
@尾張と三河 「みゃあみゃあ」VS「じゃんだらりん」
A西だ東だ 三河の歴史と「いくつもの三河」
B家康は「じゃんだらりん」と言ったのか? 三河弁の歴史概況
C三河弁が共通語の本家本元? 江戸・東京語の成立事情
5.2 三河武士の本場は今・・ 〜西三河の方言〜
5.3 「界を越えて」の夢と現実 〜東三河の方言〜
5.1
〜三河の地理的特性〜
徳川家康・生誕の地”岡崎城" |
※ 加筆に当って、うさこさんの 「現在の名古屋と三河の違いはさほど大きくない」との意見を参考にさせていただいた(BBS参照)。
この場をお借りして御礼申し上げます。
5.
図 5.2: 尾張と三河の生活圏、および主要交通ルート |
尾張と三河の境界線、境川。さほど川幅が広くないが、両岸は小高い段丘になっている。豊明市と刈谷市の境界にて。 |
〜西と東 2つの三河弁〜
図5.1 :愛知県全図と尾張・三河の区分 |