方言名称 | 三河弁だが・・ | |
上は岡崎市の"八丁味噌通り"。伝統的な味噌蔵が立ち並ぶ。2006年のNHKドラマ『純情きらり』の舞台となり、全国的な注目を集めた。下は、主演の宮崎あおいの手形プレート。この通りに設置されている。 |
ここではまず西三河弁の意識面について説明していく。 既に述べたように、三河と言っても広範囲で、生活圏ごとの違いは色々ある。特に西と東の差異は大きい。方言についても然りで、当事者の間でも違いは意識されている。しかしその一方で、大きく見た場合の"三河"というまとまりは、三河のどの地域の人も認識しているようである。まとめれば、ということになる(以下ではこの地方の方言を「西三河弁」と呼称する)。 ところで、5.1Cで述べたように
という伝説が三河(特に西三河)の住民の間で伝えられているということは述べた。そのせいか分からないが、西三河の人々は という傾向がある。また言い回しや単語で共通語と違いはあっても、発音やアクセントの面で共通語とはほとんど変わりないためか(少なくとも、伝統的な名古屋弁に比べて)、西三河の人は共通語を話すことに摩擦や抵抗感がほとんどないという。家康が江戸を作ったことに関係しているのか、岡崎市方言のアクセントについては、東京語との一致率が90%以上だという(山口幸洋の研究、他に豊橋市では70%、名古屋市と静岡県浜松市では60%、関西は約30%)。さらに元々三河弁の「〜じゃん」が東京語に取り入れられて全国に広まったということも、西三河の人の自信につながったようである。 しかしそれが「東京語(共通語)とのボーダレス化」を助長したとも言える。 私が観察したところ、「西三河一帯の若い人の間では肩透かしを食うほど三河弁独特の特徴が聞こえない」といったところが現状となっている。インフォーマント二人の取材からも、それは裏付けられた。特に「〜だら」の使用はかなり控えられているという結果が得られた(詳しくは後述)。 テレビの影響か、はたまた一足先に「東京語(共通語)とのボーダレス化」が進展した名古屋の影響かは分からないが(2.1参照)、。そして地元においても「三河弁を話している」という意識が薄れているのだという(これらの要因については、西三河各地の地域構造の変化、例えば郊外化の進展によるコミュニティの拡散が影響しているとも思われるが、これ以上は立ち入らない)。 また上で述べた"伝説"もインフォーマント二人は「聞いたことが無い」という。 そして名古屋弁との違いもかつては実態・意識ともに明確であったが、現在では両者とも共通語化により ということになっている。 西三河の言語事情は以上のようなものだが、以下の節では「現在に残る西三河弁の特徴、および共通語形との使い分け・混じり具合」について述べていく。 |
岡崎市(人口37万)。写真は岡崎城近くの街並み。家康と三河武士の故郷であることをアピールしている。 |
この章では”三河弁”(特に西三河弁)について説明していく。三河は私が大学時代の数年間を過ごした場所であると共に、私の祖父の出身地でもある。だから思い入れもそれなりにあって、三河の言葉について伝えたいという情熱も一方ならず持っている。と言っても、それは名古屋弁ほど全国の人に知られていない。「愛知=名古屋」というイメージのせいか、三河はほとんど注目されない。確かに「愛知県出身の有名人」となれば、大抵「名古屋出身」が多い。とは言え、西三河出身の有名人もいないわけではなく、岡村孝子(歌手、岡崎市)、宗田理(作家、碧南市)、中島悟(F1レーサー、岡崎市)、加藤ミリヤ(歌手、豊田市)、岩瀬仁紀(プロ野球選手、西尾市)といったあたりがいる。しかし彼らがメディアで三河弁を語ることは皆無である。ようやく近年になって、キャイ〜ンの天野ひろゆき(タレント、岡崎市)がバラエティ番組で披露した。さらに岡崎市がNHk朝の連続テレビ小説『純情きらり』の舞台となり、大きな注目を集めた。 (※)
〜 西三河の方言 〜
目次
インフォーマント | @ 刈谷市出身、名古屋在住 20代男性 A 岡崎市出身、名古屋在住 20代男性 (調査年次: 2006〜2007年) |
(1)西三河弁って、どんな感じ?
〜三河弁の自己イメージと実態〜
(1)
〜西三河弁の自己イメージと実態〜
※ 名古屋を拠点とするヒップホップグループのHome made 家族はメンバーの一人が三河出身(MC担当のMICROが刈谷市出身)のため、一部の作品に西三河弁を使用している。
5.2
・方言の自己イメージ