「〜だー」(〜なの)
・そうだー?もう終わっちゃっただー?
・ちゃんとやってるだー?
・えっ、もう行くだー?
・そうだだよ。あそこの店、つぶれただよ。
「〜だよ」(〜なんだよ)の所でも述べたが、遠州弁では準体助詞「〜の」を省略して、動詞に直接断定辞の「〜だ」を接続するところから来ている。東部の遠州弁では用法が広くなっているということである(西部では「〜(な)の」が使われる)。疑問文で使われることも多いが、「そうだだよ」のように肯定文でも使える。「雨だだよ」「お休みだだよ」など強烈に聞こえるが。
しかし静岡県では遠州東部だけで使われている。ほかは長野県中部(松本市など)で使われており、使用地域が散らばっているのが不思議なところである。
「〜(し)てごー」(〜してみて) 〔中〕
・あれ、見てごー。動いてるら。
・やってごー。やればできるよ。
・ど安いに。買ってごー。
珍しい語法だが、「〜ごらん」の省略形から来ている。私も掛川辺りで中学生が使っていたのを聞いて驚いたことがある。静岡市など駿河地域と共通している。
ここでは遠州東部(掛川市など)の特有の方言を紹介する。 同じ遠州だが、西部には見られない特徴がいくつかある。その一方、静岡市など駿河地方の方言と共通することも多い。研究者による方言区画でも、遠州東部の方言は駿河の方言と共に「静岡県中部方言」とされている。さて、いくつか特徴的な語法を紹介しよう。
「〜(だ)かしん」(〜かもしれない) 〔稀〕
・そうだかしん。俺の記憶違いかもね。
・予定が入る可能性もあるで、行けんかもしんよ。
これも駿河地域と共通の語法。「〜だか知れん」から来ていると思うが、当地域から東では動詞の否定形は「〜ない」を使うことが多くなるので、どうしてこのような表現ができたか不思議である。
なお、主に使うのは中年以上で、若者はほとんど使っていないようだ。
「〜っけ」(既に〜している: 完了)
・言ったっけじゃん。忘れただー?
・もう宿題終わったっけよ。
・いつの間に来たっけ?気付かなかったよ。
完了の表現。古典文語の「〜けり」から来ているらしい。共通語や多くの方言では過去形と同じ形だが、ここでは区別されいる。また「そうだっけ」「そんなこともあったっけ」のように回想表現が共通語にもあるが、それとは意味がずれている。
本来は「動詞の終止形+っけ」(言うっけ、来るっけ等)という接続法だが、現在は「動詞の過去形+っけ」のようになった。
なお使用地域は、東海地方では静岡県中部、すなわち静岡市など駿河地域から遠州東部のみである(遠州西部では「言ったった」「来たった」のように「〜った」を使う)。ほかに使っているのは東北の山形などで、散在している。古典語の「〜けり」の名残りが、このように限られた地域でのみ残っているのは興味深いと思われる。
「〜(だ)けん」(〜だけど: 逆節) 〔中〕
・一応、予定は空いてるけん、急な仕事が入るかもしんね。
・頑張ってやったけん、結果はどうなるか分かんないよ。
逆接の接続詞。これも駿河地域と共通の語法。広島弁など中国地方や九州の方言では理由の接続詞「〜けん」(〜だから)があるので、誤解されるかもしれない。
なお、文頭に置いて「だけん〜」ともできるが、若い世代では共通語化したらしい。とは言え、文中の「〜けん、・・」はよく使われているようだ。
掛川城天守閣と二の丸御殿。1990年代に再建された木造天守はすっかり街のシンボルになった。 御殿は全国でも藩主の居館が残った貴重なものなので、重要文化財に指定されている。 |
掛川城付近の街並み。城と調和させるため、通常の店舗も城のような白壁と瓦を思わせる屋根によってデザインされている。 |
掛川駅前の光景。人口10万だが、遠州東部の中心都市で、新幹線も停車する。 |
御前崎海岸(御前崎市)。遠州灘の荒波が織りなす絶景が堪能できる。静岡県の最南端でもある。 |
富士山静岡空港(島田市・牧之原市)。国内で最新の空港として、他の地方空港や中国、韓国へのアクセスで存在感を発揮。 富士山が見えることが売りだが、遠州側に所在する。 |